抄録
海洋に存在する硝酸は全窒素の半分以上を占め、窒素循環を理解する上で硝酸の起源を把握することは重要である。硝酸は硝化、脱窒などの生物地球化学的なプロセスによってその存在比及び安定同位体組成が変化するため、各起源の推定及び定量を行うことは難しかった。しかし大気由来の硝酸のみが特徴的に示す三酸素同位体組成に着目すると、三酸素同位体組成が生物地球化学的なプロセスによって変化しない指標であることから、海洋の硝酸の三酸素同位体組成を定量することによって海洋の硝酸における大気由来硝酸の沈着量を推定できる可能性がある。そこで本研究では実際に北極海及びベーリング海において海洋の硝酸の三酸素同位体組成を定量し大気由来硝酸の沈着量を推定した。