抄録
東シベリアタイガ林はユーラシア大陸の内陸地に位置するが、海洋から離れているにもかかわらず、発達した積乱雲が形成され局所的な降水がもたらされる。その降水の元となる水蒸気の起源を解明するのに必要とされる大気水蒸気と降水の安定同位体比の測定をし、その変動要因について考察した。大気水蒸気について、気温の上昇に伴う地表面からの蒸散の活発化によるとみられる変動が観測された。また、日変化の観測では、気温の上昇に伴う混合層厚の増大による、自由大気内の水蒸気の混合層への取り込みを示唆する結果が得られた。これらより、東シベリアタイガ林での短期間での水蒸気の同位体比は、植物の蒸散由来の水蒸気と自由大気中の水蒸気の混合がその変動を支配していると考えられる。また、降水の同位体比は降雨イベント毎に異なり、蒸発の影響や複数の水蒸気のソースの存在を示唆する結果が得られた。