抄録
河川はN2O(一酸化二窒素)の発生源とされているが、河川水中のN2Oの時空間分布についての研究や、N2Oの起源物質や生成過程、消滅過程の推定に有効なアイソトャ}ー組成の研究は少ない。本研究では都市河川がN2O収支に及ぼす影響の評価を目的として、多摩川の河口から上流75kmまでの9測点において約1年間、溶存N2O濃度・アイソトャ}ー比の分布を調べた。観測期間中、ほぼすべての測点でN2Oは過飽和で溶存し、下水処理水の流入地点付近で特に濃度が高かった。高濃度の測点ではアイソトャ}ー比も特異的な値を示し、下水処理場の放流水中の値と近いことから、N2Oが下水処理場から直接流入していると考えられた。観測値とインキュベーション実験から推定したN2O生成速度を用いて、物質収支式により測点間の河川水から大気へ放出されるN2Oのフラックスおよびアイソトャ}ー比を見積もった。