抄録
近年,堆積物や植物化石中から検出される高等植物テルペノイドバイオマーカーを用いた化学分類や古植生情報の研究が行われている.被子植物由来のオレアノイド,裸子植物(針葉樹)由来のジテルペノイドなどが典型的に知られている.演者らは白亜紀における被子植物に焦点をあてて堆積岩中の被子・裸子由来バイオマーカーを用いた植生指標を検討し,芳香族オレアノイドを用いた新指標の有用性が示唆された.しかし絶滅分類群など,化石試料を用いた基礎データが乏しい.また,白亜紀以前からのオレアナンの検出が被子植物と絶滅分類群との類縁関係を示唆するという報告もある.本公演では,絶滅分類群を含めた10種の植物化石のバイオマーカー分析の結果をまとめて,芳香族被子植物バイオマーカー指標への応用や,化学分類学的意義について議論する.