抄録
大気中14C濃度の変動(経年変化)に関する研究は、14C年代の較正という考古学への応用の重要性とともに、その変動要因が地球環境の研究と密接に関連しているために、多くの研究者によって精力的に行なわれてきた。とりわけ最近は環境変動への関心から、過去の大気中14C濃度変動から太陽活動を明らかにし、さらに太陽活動と気候変動との関連を追及する研究が数多く報告されてきた。大気中14C濃度の変動に関する情報は、年代の分かった年輪試料等の14Cを精確に測定することで得られる。われわれ国立歴史民俗博物館の研究グループは、日本産樹木の14C濃度の測定を進めてきたが、最近、日本の樹木と、北米・北ヨーロッパの観測値を基にしたIntCal04との間に0.5%ほどの14C濃度差のある時期が存在することが明らかとなってきた。本研究では、この地域効果が意味する問題について考え、あらためて、太陽活動と気候変動との関連を考察することとした。