東京で採取されたエアロゾル17試料中のn-アルカンのδDを測定し,その季節変動パターンから,その変動要因に関する考察を行った.その結果,大気エアロゾル中のn-アルカンの内,高等植物起源n-アルカンのδD値が,CPI値とよい負の相関を示し,そのδDの季節変動パターンが,エアロゾル中のn-アルカンの人為起源/生物起源比の変化を反映していることが示唆された.また,化石燃料由来n-アルカンの影響が低い場合,植物アルカンのδDが,太平洋域の気塊の影響下にある夏期に比べ,アジア大陸からの気塊の影響が増加する冬期に約20‰低くなる傾向が見られた.この結果は,冬期の日本周辺域に,大陸に起因する陸源有機物が長距離輸送されていたことを示唆する.