抄録
2006年に海洋地球研究船「みらい」によって、オホーツク海から採取されたPC4コアを用いて、浮遊性および底生有孔虫化石の安定同位体比と微量金属元素を測定し、過去約3万年以降の中層水環境の復元を行った。底生有孔虫の炭素同位体比は、最終氷期からハインリッヒ事件(H1)まで、そしてYDに相当する時期に炭素同位体比が約0.5‰大きくなる変動を示していた。底生有孔虫のMg/Caは、完新世と最終氷期で0.6-1.3mmolの範囲で変動していた。このMg/Caの値を水温に換算すると、最終氷期から完新世初期の間で約0~4℃の水温変動幅に相当した。つまり最終氷期からH1の時期に、栄養塩に乏しく、低水温の海水が水深1,200m付近にまで及んでいたことを示している。