抄録
メコンデルタから約90 km沖に位置するコンダオ島からサンゴコア試料を採取した。この試料のX線写真および長波長UV写真には1948年~1999年の年輪が見られた。長波長UV写真で見られた年輪は蛍光バンドと呼ばれるものであり,蛍光の原因として (1) サンゴ骨格に取り込まれた陸源有機物や (2) サンゴ骨格の孔隙が考えられる。この試料のBa/Ca, Sr/Ca, Mg/Caを約1ヶ月の時間分解能で測定した。Ba/Caの変動はコンダオ島の塩分変動と強い逆相関を示した。コンダオ島周辺の塩分の第一支配要因はメコン川からの淡水流出であると考えられる。また,河川流出によって沿岸海水のBa濃度が顕著に増加することは広く知られている。以上のことから,Ba/Caの変動はメコン川からのプルームを反映していると推測される。この推測は蛍光バンドとBa/Caデータの対比からも支持されている。すなわち,蛍光バンドはBa/Caの極大と同時発生であり,更に,Ba/Caの極大値と蛍光強度の間には正の相関が見られる。