抄録
生物組織でのδ13C、δ15N、δ18Oの解析は、生態学の分野で食物網の構造解析や食性解析に広く利用されてきた。動物組織中のδ13C、δ15Nは食物の情報を反映し、またδ18Oは、飲み水や生育環境(気温や湿度)に関する情報を有している。本研究では、国産、豪州産、米国産の牛肉に残されたこれらの安定同位体比の情報から、牛の生育地の相違が判別できるかを検討した。その結果、3カ国の牛肉のδ13C、δ15N、δ18Oの特徴からは、異なる国で肥育された牛肉の判別をおこなう際のツールとして、δ13Cとδ18Oが有効であることが明らかになった。また、国内の4地域で肥育された国産牛肉についての安定同位体比からは、δ18Oの相違が国産のブランド牛肉の産地を判別する指標となりうる可能性が示唆された。