近年,地震時の断層の強度低下をもたらす主要な要因の1つとして,摩擦熱による間隙圧上昇(Thermal pressurization)が注目されている。本研究では,付加体中の断層岩の化学組成変化に基づき,地震時における高温の流体岩石相互作用の有無と温度条件の見積もりを行った。付加体の浅部~中深部における断層帯の例として,IODPで掘削された南海付加体中の断層,房総・江見付加体中の断層,四万十付加体・久礼の断層を取り上げ,微量金属元素・同位体の分析を行った。江見の断層帯では地震時にThermal pressurizationが発生した可能性が高く,久礼の断層帯では地震時に最終的な断層の強度低下をもたらしたのは摩擦融解であるがそれに先行して高温流体との相互作用も起こっていたことが明らかとなった。