岩石と流体との相互作用における元素の移動について、室内実験からその分配を見積もった例は多くあるが、実際にどのような鉱物相が消失または生成しているのかをきちんと把握した例はほとんどない。とくに微量元素の場合、その元素を主成分とする鉱物相が作られることは稀なため、X線回折法などでは鉱物相の特定は困難であり、またアモルファス相が生じた場合も検出できない。これに対して放射光X線を利用した元素の吸収端の構造の解析から、目的元素の周囲の配位状態を決定するXAFS法は、元素に敏感な手法なため、とくに微量元素について非常に有効な手段である。本講演では、台湾チェルンプ断層掘削試料について、岩石-流体の相互作用により大きく濃度が変動する元素に注目し、XAFS法を用いてその移動相の推定を行った。