【序論】エイコンドライトの一種であるユレイライト隕石は、その大半がケイ酸塩鉱物結晶から成っていて、それらの結晶の隙間を埋める様に、炭素質の脈を含んでいる。炭素質脈は、グラファイト・ダイヤモンド・鉄-ニッケル合金・硫化鉄などから成る。その酸素同位体組成は他のエイコンドライトとは異なり、始源的な様相を呈していることが知られているが、珪酸塩鉱物は火成起源のようである。このように珍しい隕石であるユレイライトは、その特徴である炭素質脈をどのように内包するに至ったのか、脈中のダイヤモンドはどのように形成されたのかが度々議論されている。本研究で、我々はユレイライト中のダイヤモンドの形成要因を探ることを最終目的とし、顕微ラマン分光法を用いてユレイライト中のダイヤモンドとグラファイトのスペクトルを測定し、それについて議論を行った。
【結果】得られたダイヤモンドのスペクトルは、Miyamoto et al. (1993)で示されている、CVD合成ダイヤモンドのスペクトルと同様のピーク位置、半値幅であった。しかし、ダイヤモンドのスペクトルのピーク位置・半値幅とグラファイトのスペクトルのピーク位置・半値幅を比較したとき、それらの挙動は逆であるように見えた。このことは、ユレイライト中のダイヤモンドが衝撃起源であることを示唆しているように考えられる。