抄録
堆積物中に含まれる植物プランクトン由来のフェオ色素を利用して、日本海の最終氷期から完新世にかけて堆積したTL1,2および3の形成時の窒素循環復元を試みた。試料は日本海秋田沖の柱状コアであり、1から4cmの厚みのサブサンプリングを行った。TL3末期(24.7 cal ka BP)のPPhe aおよび TL2初期(23.4 cal ka BP)のPPhe aとPhe aの窒素同位体比は、それぞれ-5.7±0.3, -5.9±0.3および-5.7±0.2‰であった。このフェオ色素をもつ植物プランクトンは、バルク窒素同位体比が約-1‰であると推定できるが、これは窒素固定で生産されたプランクトンの典型的な値である。したがって、TL3末期からTL2初期にかけて、日本海表層では窒素固定能をもつシアノバクテリアが大規模なブルームを起こしていたと考えられる。一方、TL1直前(11.6 cal ka BP)のPPhe aおよび中心部(11.3 cal ka BP)のPPhe a およびPhe aはそれぞれ-2.9±0.3, -1.8±0.2, -1.8±0.2‰であり、TL2, 3に比べ2.8から3.1‰重く、TL1形成時の海洋表層環境はTL2, 3とは異なっていたと考えられる。