抄録
陸上高等植物に由来するテルペノイド(HPT)は、植物の分類によって異なる構造を持つことが知られており、陸源物質の海洋への輸送の供給源や後背地を特定するための有用なバイオマーカーになり得ると考えられる。本研究では、レテン、カダレン、フリーデリンという3種類のHPTに着目して、北西太平洋の表層堆積物中での化合物分布を調べ、それぞれの化合物の起源と輸送過程について考察した。
分析の結果、レテンの分布からは後背地の植生の影響以外に、化石燃料を含む都市大気による影響がみられた。フリーデリンは北西太平洋日本沖で特に多く、陸から遠く離れた外洋域のコアからは総じて微量しか検出されなかったことから、主に河川経由で輸送されていると考えられる。一方でカダレンについては地域・海域による傾向はあまり見られなかったが、これはカダレンが主に大気経由で広範囲に輸送されていることを示唆している。