抄録
海洋による大気CO2の吸収により、海洋のpHが低下する海洋酸性化が進行している。この酸性化により海洋生態系に様々な変化が生ずることが予想される。海洋に存在するDOMは、地球表層において最大級の有機炭素リザーバーのひとつである。近年の研究でDOM中の1つであるFDOMはバクテリアが主な生成源であることが明らかになっている。またバクテリア起源のDOMが難分解性DOMとして、比較的長期にわたり残存することも見出された(微生物炭素ポンプ)。これは、バクテリア起源のFDOMが炭素の長期固定物質として機能していることを示す。本研究では、この役割が海洋酸性化によりどのように変化するか調査した。
実験後半において400、800ppmにおいて高い濃度が維持された。このような難分解なDOCは、バクテリアの代謝産物である可能性が高い。酸性化が進行した処理区においてDOC濃度の残存量が少なかったことから、酸性化により微生物炭素ポンプの効率が減少する可能性が示唆された。