抄録
薩摩硫黄島は鹿児島県薩摩半島から南に約38kmに位置する火山島である. 島内には1990年代から活発な火山活動が続く硫黄岳があり, 島の南部に位置する長浜湾は浅海熱水の存在が確認されており, 防波堤の建設により半閉鎖的な環境が形成され, 水酸化鉄を含む赤褐色の海水が浮遊し海底に堆積している. 鉄沈殿物は海底から噴出する浅海熱水が海水と混合して酸化され生成している事がわかっている. 一般に水酸化鉄沈殿は優れた希土類元素(REE)の共沈剤であり , この過程で形成された鉄沈殿は海水中の溶存REE成分の他に, 浅海熱水由来のREEをも濃集していることが予想される. 本研究では, 長浜湾の鉄に富む沈殿物と海水を試料とし, 沈殿物の希土類元素組成がどの程度海水中の希土類組成を反映しているかを比較・評価した.