抄録
我々は生命の熱水起源を明らかにするために,熱水反応の研究ツールとして熱水フローリアクター装置を開発してきた.その結果,400℃,30MPaで2ミリ秒から200秒までの反応をリアルタイムで追跡する方法を確立した.さらに,紫外・可視・近赤外領域の吸収スペクトルをその場観測できる.しかし,実際の熱水噴出孔のような鉱物と熱水とがダイナミックに相互作用する不均一系を調べることはできなかった.そこで,鉱物微粒子を充填した新しいフローリアクターの開発を試みた.この結果,300℃で2から200秒で反応追跡する方法の開発に成功した.本法を用いて,我々が発見したペプチド伸長反応に対する天然鉱物の効果を調べた結果,炭酸塩鉱物がこれを促進し,原料ペプチドの約30%が鎖長の大きなペプチドに自発的に伸長することを発見した.この新しい研究ツールは鉱物と熱水が相互作用する様々なプロセスの解析に利用できる.