抄録
私たちは,鉱物の溶解・沈殿に関する鉱物学的な知見を考慮した化学風化の数値モデルの開発を行った.そのモデルをいくつかの集水域に対して適用し,河川水化学組成の再現性の評価を行った結果,反応速度の「スケーリング・ファクター」を調節することによって,観測とよく合う河川水化学組成が得られることがわかった.
また,モデルの境界条件として天水化学組成を与える必要があるが,全球の代表的な値と集水域ごとに観測された値をそれぞれ与えた場合についての比較を行った.その結果,同じスケーリング・ファクターに対して集水域によっては河川水化学組成の再現性が大きく低下することがわかった.
本研究で使用したような素過程に基づく化学風化モデルは,化学風化速度および河川水組成の推定に対して有用であるが,特に河川水組成について議論する際には土壌の鉱物組成だけでなく天水化学組成についてもきちんと考慮することが重要であるといえる.