抄録
我々は、フィリピンネグロス島で採集した2本の石筍試料を用い、トリウム230による年代測定と酸素安定同位体比測定を実施した。年代値は、それぞれ22層準と16層準について決定し、過去650年間の降水量変動を年解像度で復元した。フィリピンの酸素安定同位体比記録をインドの石筍記録と比較したところ、負の相関が認められた。正のIODでは、インド洋の海洋表層水の温度がスマトラ沖で低下し、西岸で上昇するパターンが生じる。これにより、インド北東部では夏季の降水量が上昇するのに対し、フィリピン西部では降水量が低下する。反対に、負のIODではフィリピンで降水量が上昇し、インドで降水量が低下する。2地点における対称的な降水量のパターンは、小氷期を除く期間、西太平洋の海水温が高い時期に卓越する傾向を示した。このことは、海水温の上昇がIODの発生を促進させている可能性を示唆する。