抄録
過去の気候変動の多地域情報の前後関係を知ることは、気候システムの理解の深化の上で重要である。古気候情報の極めてすぐれた記録媒体である両極氷床コアは、多くの環境記録を残している。しかし放射性核種を保存していないことから、高精度な年代決定が難しく、多地域の気候イベントとの対比が困難である。地球磁場は、過去に何度かのエクスカーションと呼ばれる不安定な状態を経験している。エクスカーションは全球的にそのシグナルを残していることが予測されるため、過去の地磁気イベントを使った高緯度および低緯度の気候記録媒体どうしの比較が可能となる。いわゆるイベント層序学的アプローチによる対比は、古気候学的に有用な年代決定ツールとなり、気候データの高緯度にとどまらない対比や前後関係の検討にも広く適用することが可能となる。復元したエクスカーションの規模とタイミングについて紹介し、古気候学的な重要性についても議論する。