抄録
日本海東縁上越沖は深部ガス含有流体フラックスが強く、メタン湧水や表層型ガスハイドレートの存在が知られている。その分布や起源の理解を目的に実施されたMD179航海では、深部ガス含有流体の影響と考えられる地球化学的特徴を確認することに成功した。メタン湧水地点では、間隙水中の硫酸イオン、塩化物イオン濃度が深部に向かって減少し、一方で溶存無機炭素濃度は上昇した。さらに、炭素同位体比の高いメタンと溶存無機炭素が検出されたことから、熱分解起源メタンのみならず、微生物起源メタンも深部流体中に付加されていると解釈できる。こうした地球化学的特徴は、メタン湧水地点から離れるにつれ弱まっていくものの、約5 kmに渡る広範囲で深部流体が影響していた。また、堆積物中の微生物群集構造も、深部流体の分布に対応して特徴的であった。類似した微生物生態系は、南海トラフやカスカディアマージンなどでも報告されており、ガスハイドレート環境を表す一つの指標になると期待される。