抄録
氷床拡大期(約250万年前)の5万年間(MIS 99~101)の堆積水銀量の変動パターンを明らかにし,第四紀の全期間に亘る堆積水銀量の気候変動史とその海洋水銀の堆積メカニズムを解明するため,北大西洋海域で掘削されたU1314の堆積コアの千年スケールの解析を行った。この水銀量変動はIRD量とよく対応しており,間氷期(MIS 99)から氷期(MIS 100)まで上昇し,MIS 101かけて減少に転じている。この両者の変動関係は,氷床拡大期に増加し,縮小期に減少する数万年スケールの気候変動に対応し,かつ同海域のU1308とU1304の現在から100万年前までの関係と一致している。さらに,両者の変動には,3千年と5千年の周期をもつピークが存在している。このような海洋水銀の堆積メカニズムが,全第四紀に亘って同様である可能性を報告する。