抄録
陸水中に溶存する硝酸や溶存無機炭素(DIC)は無機態で流出する窒素と炭素の主たる化学形態で、その起源や消費・生成プロセスの解析は、陸水生態系における窒素や炭素循環に貴重な知見を与える。硝酸やDICの同位体比は起源ごとに異なり、起源解析に有効であるが、消費プロセスの違いが、同位体比を変えてしまう場合もある。そうした同位体比が物質循環の総合指標となりうる点を霞ヶ浦や琵琶湖流入河川を例に紹介する。 提供話題の概要<硝酸の同位体組成と流域の土地利用との関係> 従来の原単位法に基づいた負荷割合と同位体混合モデルによる負荷割合を比較結果を示す。<湖水柱の硝酸・懸濁粒子の同位体組成の語る窒素循環> 湖水柱での窒素循環を反映する無機態や懸濁粒子の同位体比の結果を示す。<溶存無機炭素の同位体組成> 支流ごとに異なった夏季の平水時のDICの濃度とδ13Cの結果と出水時の小河川のDICの主たる起源が土壌呼吸由来のCO2であった結果を示す。