抄録
全Crは外洋において表層でやや減少し,中深層ではほぼ一定となる,弱いリサイクル型(弱栄養塩型)の分布をすることが知られているが,外洋における分布の全容は明らかになっておらず,Crの海洋生物化学的な意義についても,まだ明確になっていない。本報告では,北緯17度から南緯62度に至る東経60~70度に沿った南北縦断面上の全クロムの分布を報告し,分布の特徴について論じる。
海水試料は白鳳丸KH-09-5次航海で採取し,酸添加して実験室に持ち帰った。全Crは,Cr(VI)を還元した後にキレート抽出して,黒鉛炉原子吸光法で測定した。
対象海域の全域に渡って,全Crのおおまかな分布傾向は弱いリサイクル型であり,平均濃度は中北部太平洋では7 nMだったのに対し,インド洋では4 nMであった。鉛直断面分布では,南緯30°を境として赤道側と極側で分布パターンが微妙に異なっている傾向が弱く見られたが,塩分から推定される水塊構造との間には顕著な対応関係は見られなかった。