抄録
本研究では、アルカリ溶液中において、アルドース型五炭糖にホウ酸およびケイ酸を添加した加熱実験を行い、LC/MSを用いて、五炭糖の残存率変化を定量的に測定した。ホウ酸およびケイ酸を添加しない溶液中においては、五炭糖のうちリボースの減少率が最大であった。40 mMのホウ酸およびケイ酸水溶液では全ての五炭糖の減少率が低下した。特に、リボースの減少率低下が最大であった。80 mMケイ酸溶液における各五炭糖の減少率は40 mMの減少率と優位な差は無かった。一方、80 mMホウ酸溶液における各五炭糖の減少率はさらに低下し、中でもリボースの減少率が低下した。これらの結果は、ホウ酸およびケイ酸が五炭糖と複合体を形成することが五炭糖の安定性向上に繋がることを示しており、初期地球のホウ酸が濃集するような環境において、不安定なRNA構成物であるリボースが選択的に安定化され、蓄積したことを示唆する。