抄録
堆積岩中に普遍的に存在する三芳香環ステロイドを始めとした三芳香環ステロイドの同定を詳細に検討し,それらを用いた指標から海洋基礎生産者群集を復元した結果を報告する。
南東フランス・ボコンティアン堆積盆の白亜系海洋無酸素事変層準と北海道大夕張地域と苫前地域の白亜系蝦夷層群から採取した堆積岩試料を用い,GC-MSを用いて芳香族ステロイドの分析を行なった。三芳香環ステロイドの分離と同定は2種類の極性と長さの異なるカラムを用いることで可能にした。三芳香環ジノステロイドを用いたTADS(渦鞭毛藻指標)とC27 TAS(円石藻指標)を提案した。南東フランス試料では白亜紀における円石藻と渦鞭毛藻の競争関係とOAE極相期の富栄養で成層化した海洋における渦鞭毛藻の繁茂が示された。一方で北海道試料からは,現在同様に沿岸に近い海洋表層において渦鞭毛藻の生産性が高かったことが示唆された。