抄録
演者らはこれまでに,大規模地震や海底科学掘削の後に,ただちに海洋研究調査を実施してきた。調査の結果,大規模地震や海底科学掘削といった海洋底環境擾乱に対して,周囲の海水・海底の生態系が迅速に応答すること,またその生態系の応答は擾乱に伴う物理・化学場の変化と調和的に説明できることが明らかとなった[Kawagucci et al., 2012 Sci. Rep.; 2013b G-cubed; Nakajima et al., 2005 PLOS ONE]。これらの成果は,(天然に生じる)地震や(少なくとも地球科学研究業界的にはその実施が承認されている)科学掘削の機会に(いわゆる理学的な立場で)海洋研究調査を実施した結果としてえられたものである。今後もこうした地震や科学掘削などの(擾乱を目的とした人間活動ではない)海洋底擾乱の発生を把握し,地球化学を中心とした海洋科学調査を積み上げることは,(社会が要請する)環境影響評価事業への科学者の貢献の一つと言えるだろう。