抄録
火成起源や漂砂型のレアアース鉱床の開発においては、鉱石鉱物であるモナザイトやゼノタイムなどが放射性元素であるThやUを含み、これらが生産過程、特に製錬過程において濃集するため、放射性物質の環境への漏洩が懸念されている。そのため、レアアース鉱床の開発には適切な環境影響評価が重要である。本研究では、かつて錫尾鉱から回収される重鉱物からレアアースが製錬され、また現在もチタン鉄鉱などのプロセシングが行われているマレーシア・イポー市周辺地域において環境への影響を評価するために、鉄・鉛安定同位体比やREEパターンなどの地球化学的指標を用いて汚染物質の起源を特定し、汚染河川中でのThやUの挙動について明らかにすることを目的とした。鉄・鉛同位体分析の結果およびREEパターンの変化より、汚染源は周辺の重鉱物プロセシングの影響であることが明らかとなった。また、地球化学モデリングの結果より、汚染河川中でThはpHの上昇に伴う沈殿形成、Uは鉄水酸化物への吸着によって河川水中から除去されている事が示唆された。