抄録
モリブデン(Mo)とタングステン(W)は酸化還元状態によってその地球化学的挙動が異なる。特に水への溶解性については酸化還元状態によってその溶存濃度は逆転している可能性がある。カルサイトは幅広い環境下で沈殿可能な炭酸塩鉱物であり、沈殿時の水の微量元素組成を保持していると考えられている。このため、カルサイト中のMoとWの組成比からカルサイト沈殿時の環境情報を引き出せる可能性がある。本研究では様々な環境条件下でのカルサイトへのMoとWの共沈実験を実施し、X線吸収微細構造(XAFS)法を用いてその分配挙動を明らかにすることで、カルサイト沈殿時のMo/W比からカルサイト沈殿時の酸化還元状態に関する情報を引き出すことを目的に研究を行った。実験の結果、MoとWはカルサイトへの分配挙動がその溶存化学種によって異なっており、カルサイト中のMo/W比は、酸化還元状態によって大きく変動することが示唆される。
