抄録
大涌谷火山ガスを定期的に採取し,化学組成および安定同位体比の変動を調べた.水蒸気のδDは2014年11月から2015年1月まで,-51‰付近で安定していたが,同年2月から低下し始め,同年4月24日には-67‰に下落した.この二日後に群発地震が発生し始め,δDは5月8日に-56‰,6月2日には-52‰まで回復した.水蒸気同位体比の時間変化は,シーリングによりマグマ性水蒸気が一時的にマグマの近傍で蓄積し,2015年4月下旬に急激に解放された可能性を示唆している.一方,H2ガスのδDは,2013年7月から2014年9月まで-627~-615‰と比較的狭い範囲に限定されていたが,2014年10月から12月の期間,-675~-654‰の範囲に急激に低下した.2015年1月には-625‰まで回復し,2015年2月以降は,-607‰以上の高い値を維持している.H2ガス同位体比と水蒸気の同位体比を組み合わせて計算される同位体交換反応平衡温度は群発地震の発生よりも二ヶ月先行して上昇した.