主催: 日本地球化学会年会要旨集
紅河本流の河川水中総ヒ素濃度は雨季(7-8月):1.4-9.1 μg/L、乾季(4月):2.2-92.9 μg/Lであり、河口に向かって濃度が減少する傾向がみられた。紅河に流れ込む支流の総ヒ素濃度はどちらの時期も本流の濃度よりも低い範囲にあり(雨季:0.2-1.6 μg/L、乾季:0.3-4.5 μg/L)、本流は支流の流入によって希釈される。
乾期に採取した堆積物中のヒ素濃度は、2.0-55.6 mg/Lであった。紅河本流の堆積物はヒ素濃度が高く、全ての試料で30 mg/L以上であった。河川水中総ヒ素濃度とは異なり、紅河本流で河口に向かって濃度が減少する傾向は見られない。支流の堆積物中のヒ素濃度は紅河本流で採取したものと比べて低く、最大でも12.8 mg/Lであった。
紅河デルタにおけるヒ素の原因物質は上流の中国領内から紅河を通じ、主として砕屑性粒子として運ばれてきた可能性が高いが、ヒ素を濃集する鉱物の特定は今後の課題である。