主催: 日本地球化学会年会要旨集
本研究では、海底堆積物のヒ素の固定・溶出メカニズムを明らかにすることを目的として、現世の付加体堆積物である熊野海盆において採取された堆積物・間隙水を用いて分析を行った。
堆積物中のヒ素濃度との比は、100~200mbsfと350~400mbsfで値が増加することから、これらの深度でヒ素が溶出しているといえる。100~200mbsfでは、全ヒ素に占める鉄・マンガン酸化物態の割合が減少することから、この深度では鉄やマンガンの酸化鉱の分解に伴ってヒ素が溶出すると考えられる。200mbsf以深では、堆積物の熟成度を示すTmaxと間隙水中のヒ素濃度に正の相関が見られること、また400mbsfにメタンハイドレートのピークがあることから、堆積物の熟成(脱水)が進んだことで有機物態のヒ素溶出が促進されたと考えられる。