抄録
阿武隈花崗岩は環太平洋地域に代表的な白亜紀大規模花崗岩体のひとつであり,その形成史は白亜紀火成活動を解明するうえで重要である.これまで,阿武隈花崗岩体の形成史について多くの先行研究が行われてきた.岩相および露頭観察による貫入関係から,この地域の岩石は斑レイ岩が最も古く,斑レイ岩や変成岩類に貫入する「古期」花崗岩,そして古期花崗岩に貫入する「新期」花崗岩があると考えられてきた.しかしながら,これまで得られてきた黒雲母K-Ar 年代や角閃石Ar-Ar 年代に於いて,有意な年代差は報告されていない.
そこで,我々は花崗岩、斑レイ岩試料からジルコンを分離し,そのU-Pb 年代測定を行う事で,マグマの貫入時期を正確に評価した.その結果,斑レイ岩の貫入は周囲の花崗岩と同時期である事,新期- 古期花崗岩に有意な年代差が無い事,阿武隈地域の東から西にかけて貫入年代が若くなる傾向がある事,が明らかになった。