抄録
海洋酸性化が海洋の石灰化生物や海水の化学組成に与える影響についてはこれまで多くの議論が交わされている。一方、マンガン団塊といった深海の堆積物に酸性化がどのような影響を与えるかについては、ほとんど分かっていない。本研究では海洋酸性化で起こる海水のpHの低下に着目し、マンガン団塊や遠洋性粘土などの深海堆積物サンプルから、pHに応答してどの元素がどの程度溶出するのかについて、溶出実験を通して考察した。Fe・Mn・Co・Ni・Li・Be・Sc・Y・Ba・Tl・U・Mg・Sr・Siといった元素はpHの低下に伴い溶出量が増加した。一方MoやV、そして毒性を持つCu・Zn・Cd・Pbなどの元素はアルカリ性の条件下で大きな溶出量が観測された。この溶出量の違いは各元素の吸脱着反応に起因していると考えられる。しかしこれらの元素の溶出量は非常に低く、酸性化が周囲の生態系に与える影響は限定的だと考えられる。