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地球上の極限環境下における微生物活動境界を制約することは、宇宙生物学的な生命居住可能領域を定義する上で重要である。マリアナ前狐に位置する南チャモロ蛇紋岩海山は、湧水流体のpHが12を超え、地球上で最もアルカリ環境と考えられている極限環境である。このような環境において、(1) 深部で微生物活動はあるのか、(2) 深部由来の硫酸はどのように形成されたのか、ということは明らかになっていない。そこで本研究は、掘削コア中硫化鉱物、間隙水中硫酸、及びCORKによって海底下150 m程度から採取された深部流体中硫酸・硫化水素、これらの四種硫黄同位体比を高精度で計測し、微生物硫酸還元活動及び深部硫酸の起源を制約することを試みた。観測した同位体比を分析した結果、(1) 微生物硫酸還元は蛇紋岩海山下55 m程度(コアの最深部)でも起きている可能性があること、(2)深部由来の硫酸はプルーム直上玄武岩質溶岩島のかんらん岩包有硫化鉱物の酸化によってもたらされている可能性があることがわかった。