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人間活動に伴い大気へと放出された二酸化炭素が海洋表層水のpHを例にない速さで低下させている(海洋酸性化)。造礁サンゴの石灰化は海洋酸性化に脆弱であることが指摘されている。これまで、海洋酸性化が造礁サンゴに与える影響の評価は一般に飼育実験を通じて行われてきており、野外において影響を評価した研究はほとんどない。そこで本研究では、北西太平洋に位置する父島・喜界島で得られた塊状ハマサンゴの炭酸塩骨格に対して、過去100年間のホウ素同位体比(δ11B)の分析を行った。測定結果は、1960年以降、ホウ素同位体比が顕著に低下していること、すなわち石灰化流体(炭酸塩骨格の素になる母液)のpHが低下していることを示唆していた。温暖化に代表される種々の環境ストレスに既に晒されている造礁サンゴに対して、海洋酸性化はさらなるストレスを既に与えている可能性が高いと考えられる。