p. 202-
本研究では、火成岩におけるSr安定同位体分別メカニズムに関与する要因を検討するため、単一花崗岩体のSr安定同位体分析及び組織観察を行った。研究対象である単一花崗岩体の只見川古期花崗岩類(アプライトを含む)のSr安定同位体比はδ88Srが0.270/00から-0.740/00を示した。只見川古期花崗岩類のδ88SrはSr量の対数値と直線的な相関を示したが、アプライトはその相関から外れた。これは、只見川古期花崗岩類はレイリー分別過程に従うことを示し、アプライトは別の同位体分別過程に従う可能性がある。離溶組織観察ではカリ長石-斜長石間に発達するAb-richな斜長石で構成される反応帯の幅が分化の進んだ一部の岩石で広くなる傾向が見られた。これらの結果から、Sr安定同位体分別はレイリー分別過程に従うが、アプライトは別の同位体分別過程を考慮する必要がある。その可能性としては鉱物-流体間反応が考えられる。