熱水起源の鉱石の年代測定について,これまで硫化鉱物のU-Th法,重晶石の非平衡年代測定などが用いられてきた.重晶石は熱水と海水が混ざることで形成される。熱水中には,岩石からラジウムが多量に溶け込んでおり,重晶石中のバリウムイオンと置換することでラジウムが含有する.近年,熱水性重晶石を用いたESR(電子スピン共鳴)年代測定が可能であることが示され,数年から数千年の範囲に適用できることが報告された.?BR?今回,伊豆・小笠原弧の海底熱水活動域周辺から採取された鉱石の年代測定を,放射非平衡及びESR法により試みた.本研究で分析対象とした試料は,NT13-09航海により明神海丘と明神礁カルデラから採取された鉱石試料である.?BR?年代測定の結果,熱水噴出の見られるチムニー試料では,両年代測定法で10年以下の年代が得られた.また,熱水噴出の見られないチムニー試料では,約1000年の年代がESR法により得られた.