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近年、ジルコンのウラン-鉛年代とサニディンのアルゴン-アルゴン年代が見かけ上逆転することが、アメリカの東部カリフォルニアロングバレーカルデラにて報告されている。この矛盾に関して、ジルコン結晶化年代を決定する際に必要となる初生放射非平衡の補正係数が正確に決定できていないことが指摘されている。しかし、これだけではこの年代の逆転を説明するには不十分であり、固体物質の部分溶融とジルコン晶出の二段階での元素分別とそれに伴うマグマ・ジルコン中での放射非平衡を想定した年代計算によって合理的に説明可能である。しかし、こうした計算にはいくつかの未知数を見積もる必要があり、放射非平衡の影響を受けないトリウム系列の年代測定法やイオニウム法を導入することが重要である。本研究ではレーザーアブレーションICP質量分析法を用いてジルコンから正確なトリウム-鉛年代とイオニウム年代を得るための基礎的なデータを提示する。