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鹿児島湾湾奥部、桜島北東の水深約200mの海底には若尊と呼ばれる海底火山があり、過去の潜航調査により、3つのチムニーを伴う活発な熱水噴出活動が確認されている。本海域のチムニーは主にタルクで構成されているが、わずかに輝安鉱(Sb2S3)を含み、一方で熱水マウンドは輝安鉱の塊状硫化物であることから、この海域には輝安鉱を主体とする海底熱水鉱床の存在が期待される。アンチモンを主体とする海底熱水鉱床は稀であることから鉱床形成メカニズムの解明が望まれる。熱水系における鉱物の沈殿は主に温度によって規制されることから、鉱物の生成温度が推定できれば鉱床の形成メカニズムを検討する有力な情報となる。そこで本研究では、硫化鉱物と熱水中の硫化水素との間で起こる硫黄の同位体分別を利用した地化学温度計(Ohmoto and Goldhaber,1997)を用いて輝安鉱の生成温度推定を試み、輝安鉱からなる塊状硫化物の成因解明を目指した。