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磯焼けが起こる海域において、鉄鋼製造過程の副産物である製鋼スラグと間伐材などの木材チップ由来の堆肥を混合した施肥材(ユニット)による藻場再生の試みが行われている。この試みの中で、ユニット中の製鋼スラグの経年変化の解明は重要な意味を持つ。本研究では実海域を模擬する室内海水環境を作り出し、スラグ中の鉄の化学状態の経時的変化ついて報告する。57Fe MÖssbauer 分光法によってスラグ中の鉄の化学種分別を行い、1, 10-フェナントロリン吸光度法によって海水中の溶存鉄濃度の測定を行った。結果、海水中の鉄濃度変化とスラグ中の鉄化学種の相対比の変化の間には1週間の時間差が観察されるという興味深い挙動を示した。