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水圏中のAsやSeは、酸化的環境への暴露に伴い析出したFeにより濃集される可能性がある。東京都江東区大島においては集水桝中の鉄析出物へのAsの特異的な濃集と、路面上滲出溶液から高濃度のSeが確認されている。鉄析出物へのSe濃集も起きている可能性が高いと考え、本研究ではこのような高マトリクス環境下におけるSeの動態について検証を行った。大島の鉄析出物からは、桝内の水試料、日本の一般的土壌や他地点の鉄析出物と比べ高い濃度のSeが検出された(最大59.8 mg/kg)。一方、大島の鉄析出物中AsとFe濃度は正の相関を示すが、SeはFeとの相関が見受けられない。SeはAsのFeへの吸着に競合する化学種であることは報告されているが、260-16300 mg/kgという大過剰でAsが存在する大島の鉄析出物においては、Seは従来の知見とは異なる濃集機構を有することが強く示唆された。