約6500万年前の生物大量絶滅と地球環境変動は、世界各地で発見されている白亜紀/第三紀(K/Pg)境界粘土層中の古生物学・地球化学的記録に証拠づけられている。しかし一方で、全有機炭素量等の分布が各境界層によって異なる点についてはあまり言及されていない。我々は、当時の地球環境変動が生命に及ぼした影響の地域的差異とその要因を理解するため、北半球に比べ研究の少ない南半球のK/Pg境界層に着目した。実験では、アルゼンチンNeuquén盆地K/Pg境界層とその上下層で採取された15種の堆積岩粉末試料を用い、CHNS元素分析装置を用いてそれらに含まれる炭素・硫黄含有量の分布を明らかにした。また、各堆積岩の可溶性有機成分をジクロロメタン/メタノール混合溶液で超音波抽出し、GC-MSで測定、数種の生物指標分子を同定した。これらの分布と他地域のK/Pg境界層における分布とを比較した結果、南半球では森林火災の影響が少なく、一方で酸性雨は北・南半球に渡り地球規模であった可能性を示した。