p. 128-
竹富島の北東沖約1 kmの海底の数箇所から30°C以上の温泉水がガスを伴って湧出しており(大森ほか,1993; Hirayama et al., 2007)、そのガス成分にはマグマ由来と考えられるHeガスが混入していることが知られている(Toki et al., 2017)。竹富島沖で湧出する海底温泉および竹富島で湧出する井戸水の試料を採取、分析した。竹富海底温泉のNa濃度、Mg濃度、Cl‒濃度およびSO42‒濃度は周辺海水より低く、Ca濃度、B濃度などの一部の成分濃度は海水よりわずかに高い値を示しており、周辺岩石と反応した可能性が考えられる。また、竹富海底温泉および周辺海水の水素および酸素の同位体比は同程度の値を示すことから、起源は周辺海水と考えられる。よって、竹富海底温泉は、周辺海水が海底下に浸透し、温められることで海底面から湧出していると考えられ、地下深部において水と岩石が反応して生成された熱水やマグマ水の供給はほとんどないと考えられる。