硫化ジメチル(DMS)は植物プランクトンやバクテリアの活動によって作られる気体であり、大気中での雲形成やそれに伴うアルベドの変化に寄与する。本研究では船上養実験を行い、海水中のDMSおよびその前駆体ジメチルスルホニオプロピオネート(DMSP)が、極域海洋における気候変化要因として重要な昇温、酸性化、低塩化の3つの環境ストレスの複合的な変化に対してどのように応答するか評価した。培養実験は2015年に北極海で行われた「みらい」MR15-03で採取した表層海水を用いて行った。昇温の影響によって植物プランクトンの比増殖速度は加速され、DMS・DMSPの放出速度も増加した。酸性化の実験区では植物プランクトン群集組成の顕著な変化はみられなかった。一方で、低塩分の条件下ではDMS・DMSP生成が増加した。低塩化はDMS・DMSPの生成を抑制していた。