温暖化の進行に伴って大きな環境変化が予想される西部北極海において夏季の観測を3年間行い、溶存一酸化二窒素(N2O)の時空間分布を明らかにし、アイソトポキュル比(NNO分子内の15N分布も考慮した同位体比)に基づいて生成・消滅過程の解析を試みた。2013年と2015年は表層水中のN2O濃度が大気に対して過飽和となる測点が多く、鉛直方向にほぼ一様な濃度分布がみられたが、2014年は未飽和の測点が多く、深度ともに濃度が増加して底層で最大となった。一方、アイソトポキュル比と濃度の関係は観測年によらずほぼ一定で、大気との2成分混合を仮定して得られる端成分の特徴から、N2Oは底層で主に硝化で生成し還元の影響をやや受けていること、融氷水による成層化の強弱により表層への輸送の度合いが変動することが明らかになった。