本研究では、沈み込み帯断層における地震時の摩擦溶融履歴・過程を明らかにするため四万十付加体牟岐地域のシュードタキライトおよび関連する変質黒色脈について微小サンプリングと主成分・微量元素分析、Sr同位体分析を行った。その結果、粘土鉱物に富む細粒基質が選択的に全溶融し、一方で斜長石・石英粒子が融けないような非平衡溶融が起こり、その結果生じたメルトが移動・濃集したと考えると、シュードタキライトの主成分・微量元素組成の特徴がほぼ完全に説明できることが分かった。二次的変質により粘土化している部分に関しても組成的特徴は同一であり、微量元素の組成は変質後も保存されることが示された。また、黒色脈には見かけのRb-Sr年代が大きく異なるものが存在し、複数の活動履歴が記録されている可能性が示された。断層岩の化学分析は地震時の摩擦溶融過程・動的弱化の理解に有効な手段であると考えられる。