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本研究では、Nd、W、Zrの3つの同位体を用いて火星隕石を分析し、火星の初期分化史を明らかにすることを長期的目標としている。短寿命放射性核種146Sm、182Hf、92Nbからそれぞれ壊変した142Nd、182W、92Zrの同位体異常を測定することにより分化過程の年代を制約することができる。Sm/Ndは地殻−マントルの分化、Hf/W、Nb/Zrはコア−マントルおよび地殻−マントルの分化によって分別する。火星隕石のうちレルゾライト質シャーゴッタイトはMgに富むことが知られているが(Riches et al., 2011)、Mgに富む試料においてはHf、W、Nb、Zrを完全に回収することができないという問題点がある。これに対し本研究では、回収率を高めることを目的とし、Al添加法(Tanaka et al., 2003)を用いた分離を試みている。