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モリブデン(Mo)とタングステン(W)は, 同族の金属であるが,存在する酸化還元環境や,形成過程や組成の違いにより濃度と同位体比が変動する.そのため,Mo, Wの濃度と同位体比は,海洋の物質循環のトレーサーまたは,古海洋環境や古気候の復元の重要な手がかりになりうると考えられる.しかし,海水中W安定同位体比に関する報告は存在せず,地質試料中W安定同位体比は報告例が少ない.また,それらの結果にも大きなばらつきが見られる.そこで本研究は,地質試料中Mo, Wの濃度と同位体比の一括分析法を開発し,地質標準物質中Mo, Wの濃度並びに同位体比のデータベースを作成し,大陸,海洋を通したMo, Wの挙動を明らかにすることを目的とした.本研究では,9種類の地質標準物質の分析を行った.火成岩試料のMo, W同位体比はほぼ均一であったが,Mo, W濃度は有意な変動を示した.一方,堆積岩試料中のMo, W濃度並びに同位体比は,大きな変動を示した.