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海洋における生物一次生産の制限要因の一つとして溶存鉄の不足が挙げられる。エアロゾル中の人為起源鉄は溶解性が高く重要な鉄の供給源となる可能性がある。本研究では人為起源鉄が低い鉄安定同位体比(δ56Fe)を示すことに着目し、人為起源鉄の排出源付近の試料分析から低い同位体比を要因を考察した上で、海洋エアロゾル中の人為起源鉄の寄与の推定を行った。排出源付近の微小粒子は、起源物質に対して2-4‰程度低いδ56Feを示し、高温燃焼で気化を経て同位体分別が起きたことが示唆された。気化成分のδ56Feは-4 - -5‰と見積もられ、鉄が難揮発性であることと、分子量の大きな鉄化学種で気化することが同位体分別の要因であると示唆された。海洋エアロゾル試料の微小粒子は、粗大粒子よりも1-2‰程度低い同位体比を示し、エアロゾル中の溶存鉄のうち3-5割が人為起源鉄であると推定された。